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特許・実案

AI関連特許
2020.05.24

日本
出願

特許庁は、AI関連技術に関する事例を作成、公表しています(頁右下の「資料はこちら」をクリックください)。

(1)この資料には、記載要件及び進歩性の判断について事例とともに示されていますが、簡単に言えば、以下の点がポイントです。権利化するためには、これらのポイントをクリアする必要があります。
<記載要件>
①教師データに含まれる複数種類のデータの間に相関関係等が存在することが出願時の技術常識を鑑みて推認できるか否か
②教師データに含まれる複数種類のデータの間の相関関係等が明細書等に記載された説明や統計情報に裏付けられているものであるか否か
③教師データに含まれる複数種類のデータの間の相関関係等が実際に作成した人工知能モデルの性能評価により裏付けられているものであるか否か

<進歩性>
⑪人間が行っている業務の人工知能を用いた単純なシステム化であるか否か
⑫入力データから出力データを推定する推定手法の単純な変更であるか否か
⑬学習に用いる教師データの追加に、顕著な効果が認められるか否か
⑭学習に用いる教師データの変更が既知のデータの組み合わせであり、顕著な効果が認められないものであるか否か
⑮学習に用いる教師データに対する前処理(進歩性肯定)

(2)弊社(IAT)でも、AI関連特許のご相談が増えています。進歩性については、「⑪人間が行っている業務の人工知能を用いた単純なシステム化」、「⑫入力データから出力データを推定する推定手法の単純な変更」となる場合も多いですが、教師データのつくり方に工夫があったり、データの間の相関関係がユニークであることことから特許出願に至ることもあります。
 何かお困りごとがありましたら、お気軽にご連絡ください。TV会議にも対応しております。

特許異議の申立ての状況
2018.01.04

日本
審判等

特許庁から「特許異議の申立ての状況、手続の留意点について」が公表されています。

平成27年度364件、平成28年度1214件、平成29年度9末現在934件の申立てがされています。取り消しになる割合は、審理中の案件を除けば、約10%のようです。IATは受け側の代理が多いですが、最終処分はすべて「維持」となっています。
「特許異議の申立年毎の処理状況(割合及び件数)(速報値)」

意匠

「関連意匠制度」の改正に関する続報等
2020.05.12

日本
出願
審判等

 前回、関連意匠制度の改正についてごく簡単に触れさせて頂きました。
 そのうち、注意点として挙げた本意匠(基礎意匠等)を「公知意匠として扱わない意匠」とする旨の規定(意匠法第10条2項および8項:以下、当該規定)に関する運用について告知がありました。以下に、適宜審査基準にも触れつつ、簡単に記載します。

・関連意匠に関する審査基準(意匠審査基準『第Ⅴ部 関連意匠』)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/shinsa_kijun/document/index/isho-shinsakijun-05.pdf

1. 当該規定(審査基準3.7)
 当該規定は、関連意匠の意匠登録出願の出願人の意匠(以下、「自己の意匠」)のうち、審査官が次の意匠を関連意匠として意匠登録を受けようとする意匠(以下、出願する関連意匠)の審査において、当該関連意匠の新規性及び創作非容易性の判断の基礎となる公知意匠から除外する旨の規定です。

・ 出願する関連意匠の基礎意匠(本意匠のうち、他の意匠の関連意匠になっていないもの)と同一又は類似する意匠
・ 出願する関連意匠の基礎意匠に係る関連意匠と同一又は類似する意匠

(1) 自己の意匠(審査基準3.7.1)
 審査基準では、2つの意匠を自己の意匠として挙げています。なお、他人が権利を有するものは含まれません。

・ 関連意匠の意匠登録出願人自らが意匠権を有する意匠
・ 関連意匠の意匠登録出願人自らが意匠登録を受ける権利を有している意匠

(2) 公知意匠の公開時期等(審査基準3.7.2)
 次に、何時公開された意匠が該当するのか、について。大雑把な言い方をすると、基礎意匠等の出願後に公開された/それらに係る新規性喪失の例外の適用を受けた意匠です。

・ 出願する関連意匠の基礎意匠と同一又は類似する意匠であって、当該基礎意匠の出願時(優先権主張の効果が認められる場合は、第一国の出願日。)以降に公知となったもの
・ 出願する関連意匠の基礎意匠に係る関連意匠と同一又は類似する意匠であって、対応する当該各関連意匠の出願時以降に公知となったもの
・ 上記の基礎意匠および基礎意匠に係る関連意匠と同一又は類似する意匠であって、それらにおいて、新規性喪失の例外の規定が適用されているもの

(3) 消滅等した意匠に係る公知意匠(審査基準3.7.3)
 これは、前回にも触れたことに同じです。当該規定の例外として「公知意匠として扱われる意匠」に該当する条件です。
 具体的には、審査基準にある通りで、基礎意匠に係る関連意匠の出願が取下げや意匠権の放棄等がされている場合には、それらに係る公知意匠は、審査において新規性及び創作非容易性の判断の基礎とされます。
 なお、基礎意匠の扱いについても同様とのことです(同基準(注2)参照)。

2. 規定の適用において考慮する事項(審査基準3.7.4 (1))
 一方で、実際問題として、公知意匠が関連意匠の意匠登録出願人のものか否かを判断することは困難です。公開されている意匠に必ずしも製造者に関する情報等が明らかにされていないためです。
 そこで、審査基準において「自己の意匠」に該当するか否かを判断する例として、次の4つを挙げています。

・ 公知意匠に示されている標章等から出願人の標章等であることが明らかな場合
・ 関連意匠の意匠登録出願の出願人が複数の者による共同出願である場合であって、公知意匠の実施者がそのうちの一人である場合(当該公知意匠について当該共同出願人以外の者が意匠登録を受ける権利を有している場合を除く。)
・ 関連意匠の意匠登録出願の出願人から意匠権の実施の許諾を受けて実施していることが推測できる場合
・意匠権の移転があり、移転される前の意匠権者と公知意匠の公開者が一致する場合

3. 運用の変更に関する告知
 やっと本題です。上記のような次第ですが、現実の商取引を考えると、審査基準の例示だけでは判断ができない印象を受けます。実際、審査基準案に関する意見募集において、個々の公知意匠が「自己の意匠」に該当することを証明することは困難であり、可能であるとしても証拠を揃えることに時間を要するとの指摘がありました。
 そこで、そのような指摘を踏まえたのかもしれませんが、拒絶理由通知書に対する応答期間内に意見書を提出することが困難な場合かつ出願人からその旨の申出があった場合には、審査官は、職権により応答期間を1か月延長する運用に変更されませした。

新たな関連意匠制度の施行に伴う意匠登録出願における拒絶理由通知の応答期間の延長に関する暫定運用について
https://www.jpo.go.jp/system/design/shinsa/general/zantei_unyo.html

 指定期間経過後における当該期間の延長請求を認める旨の規定が施行されるまでの暫定的な措置とのことです。
 意匠法の改正が施行されたばかりですが、該当する出願が増えてくるにつれて、有益な運用になるものと思います。

令和元年意匠法改正のうち「関連意匠制度」の改正について
2020.04.16

日本
出願
その他・全般

 意匠法の改正により本年(2020年)4月1日から保護対象として画像そのもの、および建築物等の外観や内装まで保護対象とされたことはもちろん、関連意匠制度の改正や権利期間の延長、と意匠制度について大きな改正がありました。
 今回は、これらのうち関連意匠制度の改正について簡単に触れたいと思います。

1. 概略
 従来の関連意匠制度において、関連意匠が出願できる期間は、本意匠に係る意匠登録出願の出願日から同意匠公報の発行日前まで(審査期間を考えると、本意匠の出願日から概ね1年程度(査定不服審判や審決取消訴訟を考慮せず。))でした。
 これに対して、今回の改正では、同期間は、基礎意匠(本意匠のうち、他の意匠の関連意匠ではない本意匠)に係る意匠登録出願の出願日から出願後10年を経過する日前と大幅に長くなりました。

 また、本意匠に既に関連意匠があるときに、当該関連意匠にのみ類似する意匠を関連意匠として登録を受けることも可能になりました。
 さらに、先願(意匠法第9条)として扱われない本意匠や関連意匠の範囲の拡大、審査において公知意匠として扱わない意匠についても規定されています。

2. 実務に関して
 願書への本意匠の記載は、従来どおりです。また、改正前の意匠登録との関係や公知意匠としては扱わない意匠である旨の主張については、以下のサイトに解り易く説明されています。
https://www.jpo.go.jp/faq/yokuaru/design/document/2019_kaisei_faq/kakuju_qa.pdf

 さらに細かな審査基準については、こちらの資料も役に立つと思います。
https://www.jitsumu2019-jpo.go.jp/pdf/resume/resume_037.pdf

3. 注意点
 上記のように、出願人(権利者)にかなり有利になる制度改正ですが、いくつか注意すべき点もあるように感じています。

(1) 公知意匠として扱わない意匠
 一つ目は、「公知意匠として扱わない意匠」の当否について。審査基準では、当該意匠に該当するとみなす意匠には、一定の条件があります。また、当該意匠の当否が争われる場合には、意見をすることも可能です。
 しかしながら、インターネットを通じた情報が大量かつ迅速に拡散される現状において、条件に合致しない意匠が生じる恐れがあるように思います。この点については、審査の蓄積等を待つ必要があると考えます。

 二つ目は、条文にある「除く規定」です。「公知意匠として扱わない意匠」に該当するためには、対象となる本意匠等の出願が取下げ等されていないこと、および同権利が消滅していないことが条件です。結果として、「公知意匠として扱わない意匠」に該当させるたには権利維持が必要になるため、意匠権が不要であったとしても維持せざるを得ない状況が生じる恐れがあるように感じます。

(2) 外国出願
 上述したことは、あくまでも日本国内のみの話です。
 すなわち、基礎意匠の出願日から10年間は関連意匠の出願が可能、かつ「公知意匠として扱わない意匠」という優遇は、外国では受けることができません。
 また、外国でのビジネスも当たり前である状況、および意匠登録出願に係る優先権主張期間が6ヶ月であることも考慮する必要があります。

需要者の関心と公知意匠の参酌
2020.03.16

日本
出願
その他・全般

 意匠の登録要件の審査に関して、新規性として出願された意匠と公知意匠の類否が判断されます。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/shinsa_kijun/document/index/6.pdf
 また、意匠の類否の判断主体は、需要者(取引者を含む)です。彼ら(彼女ら)に対して意匠が異なる美感を起こさせるか否かにより類否が判断されます。なお、意匠の形態が需要者の注意を引きやすいか否かの評価においては、先行意匠における形態が考慮されます。
 昨年11月に、これらの点について判断した事件があったので、ご紹介します。

1. そうめん流し器事件(請求容認)
(平成29年(ワ)第8272号損害賠償等請求事件:大阪地判令和元年8月29日)
  https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/911/088911_hanrei.pdf

 原告(権利者)は、家庭で流しそうめんをすることができる「そうめん流し器」に係る全体意匠(第1551624号)の意匠権者です。被告も同様の機器を製造・販売しています。
 そうめん流し器には、高所からレールにより低所にそうめんを流す「ウォータースライダー型」と容器(トレイ)の中をそうめんが循環する「流水プール型」の2種類があり、これらの機器に係る意匠が先行意匠として挙げられています。これが本件の大きなポイントです。

(1) 需要者の関心
 上記のような状況において、需要者が誰で、機器のどこに関心を寄せるかについて判決では、『その需要者は,家庭等で流しそうめんを楽しもうとする一般消費者であると認められる。かかる需要者は,その使用態様に鑑みれば,そうめんの流れ方やすくい取りやすさに主に関心を持つと考えられるから,基本的には,真上や斜め上から見た水路部のうちのレール部及びトレイ部内部の形状に注目するものといえる。』として、機器の用途や機能を丁寧に理解した上で、需要者の関心を判断しました。

(2) 公知意匠の参酌
 被告は、登録意匠の要部(登録意匠の特徴)は、複数の公知意匠を基に、登録意匠のうちごく限られた形態である旨を主張しました。
 これに対して判決では、複数の公知意匠があること認めつつも、『意匠においては,様々な要素の組合せから構成される全体としての視覚情報が最終的には意味を有するものであり,一部に公知意匠が含まれていても,他の要素と併存することで全体としては異なる意匠を構成することもあり得る。』として、『公知意匠が包含されることをもって,直ちにその部分を要部から排除すべきものではない。』と判断しました。
 その上で、登録意匠のウォータースライダー型および流水プール型の各そうめん流し器の構成を組み合わせた形態を要部(特徴)と認めました。

2. 補足
 需要者の関心は、特定された需要者や物品の用途や流通形態によって異なります。今回の事件では、家庭でそうめん流しを楽しむ機器なので、特定の業種や性別ではなく、一般需要者とされ、物品の使用時の形態に重点が置かれた印象を受けます。
 また、公知意匠にある形態を含めて意匠の要部を認定することは、出願の審査でも同じです。ただし、公知意匠の単なる組み合わせ(創作容易)に該当しないこと(3条2項の要件を満たすこと)が前提になります。
 別途請求された無効2018-880004(本件被告が請求人;本件原告が被請求人)では、新規性欠如および創作容易との無効理由が否定され、その審決が確定しています。興味があれば、読み比べてみるのも面白いかもしれません。

意匠に係る図の省略と留意すること
2020.02.17

日本
出願

 従来から、意匠が対称または同一のときの一方の図、底部が見られることがない重量物に係る底面図または画像意匠に関して破線部分のみを表す図は、省略することができます。
 これらの他にも、審査基準の改訂により昨年5月から次のような意匠について、図の省略が認められるようになりました。

1. 内容
(1) 省略が認められる図
 今回の改訂では、具体的にどの図という指定はありません。「意匠の創作の具体的な内容」を特定することができると認められれば、どの図を省略することも認められます。
 例えば、審査基準改訂の概要にあるように、意匠に係る物品が額縁であり、その背面図がなくとも「意匠の創作の具体的な内容」が特定することができれば、背面図の省略が認められます。

 また、部分意匠の場合には、主旨は同じですが、「意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ、範囲が特定できる場合であって、意匠登録を受けようとする部分以外の部分のみが表れる図」を省略することがでるとして、少々条件が付きます。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/shinsa_kijun/kaitei/document/190426_ishou_kaitei/kaitei-sanko.pdf

(2) その取扱い
 意匠をすべて実線で表現した意匠について図を省略した場合には、全体意匠ではなく、部分意匠として取り扱われることになります。図を省略した形態については、「意匠登録を受けようとする部分以外の部分」になるためです。
 なお、部分意匠として出願したものは、図を省略しても、そのまま部分意匠として扱われます。

2. 補足
 以上のように、図の省略が可能になったので実務上の負担は軽くなったと感じます。
 一方で、全体意匠しか認めない国(例えば、中国、タイ)に優先権主張を伴う出願のご依頼があることも考慮すると、図を安易に省略ができないことも現実です。また、省略することにより、権利範囲が不明確になることも避ける必要があります。
 したがって、図を省略する場合には、当たり前ですが、それによって何らかの不利益やデメリットがないかもきちんと確認する必要があります。

英国のEU離脱に伴う欧州共同体意匠に係る出願および登録の扱い(概略)
2020.01.21

欧州
出願
その他・全般

 英国の欧州連合離脱に伴う、欧州共同体意匠(RCD)に係る出願および登録の扱いについて概略のみ紹介させて頂きます。

1. 対象
 欧州連合知的財産庁(EUIPO)への直接出願
 欧州連合知的財産庁(EUIPO)を指定した国際意匠登録

2. EU離脱後の扱い
(1) 離脱日において出願中の案件
 離脱日から9か月の期間において、英国意匠法の規定に従った国内出願をすることにより権利化を図ることができる。当該出願において、欧州共同体意匠出願に係る出願日および優先日が認められる。

(2) 離脱日において登録済みの案件
 存続している欧州共同体意匠は、英国で受けられる保護や権利と同等の保護等が継続される。ただし、EU離脱後に年金(更新)期限が到来する案件は、欧州連合知的財産庁への更新手続きとは別に、英国庁への更新手続きも必要である。

3. 補足
・ 離脱撤回や離脱交渉の延長は考慮されていません。
・ 出願中の案件については、自動的に出願が移行される訳ではなく、英国庁への新たな国内出願が必要です。
・ 大量の欧州共同体意匠が英国意匠として登録されると予想されます。混乱やミスがおこる恐れがあるので、欧州共同体意匠が英国意匠として登録されているかについて、現地代理人を通じてチェックしたほうが好ましいです。
・ 2020年1月7日時点における情報です。掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、利用者が当情報を用いて行う一切の行為について、何ら責任を負うものではありません。

---参考情報---
https://www.gov.uk/guidance/changes-to-eu-and-international-designs-and-trade-mark-protection-after-brexit
https://www.gov.uk/guidance/eu-and-international-designs-and-brexit-legal-issues-for-right-holders

商標

単色からなる色商標に関する審決/判決について
2020.05.11

日本
出願
審判等

 色彩のみからなる商標(以下、色商標)の登録が認められるようになってから、今年の4月1日で5年が経過しました。そこで、登録状況を概観しつつ、目についた審決や判決をピックアップしました。

1. 登録状況
 J-PlatPatで検索したところ、検索日(2020年5月8日)時点において、最初に登録になった第5930334号を含む8件の商標が登録されています。なお、いずれの色商標とも2以上の複数の色からなる商標です。検索結果を見る限りでは、単一の色からなる色商標(以下、単色商標)の出願はあるものの、登録は皆無です。

2. 審決/判決
 一方で、審判や審決取消訴訟で登録性を争った案件も公開されています。知っているものだけで恐縮ですが、以下に挙げさせて頂きます。
(1) 審決(不服2017-2203:拒絶審決確定)
 第7類の商品について出願された、黄色からなる単色商標です。商標法3条1項3号に該当するとの拒絶理由に対して同法3条2項に該当する旨を主張するも、主張が認められずに拒絶査定となりました。なお、審判においても同主張が認められず、拒絶審決がされました。
 詳細は審決公報をご覧頂くとして、本件では、商標法3条2項に該当するか否かの判断において『単一の色彩の保護について』として示された以下の事項が参考になると考えます。

 色彩は,古来存在し,何人も自由に選択して使用できるものであり,単一の色彩それ自体には創作性や特異性が認められるものではないから,仮に,単一の色彩が出所表示機能(自他識別機能)を持つようになったと思われる場合であっても,色彩が元々自由に使用できるものである以上,色彩の自由な使用を阻害するような商品表示(単一の色彩)の保護は,公益的見地からみて容易に認容できるものではない。
 そして,単一の色彩が特定の商品に関する出所識別標識として保護される場合があるとしても,当該色彩とそれが施された商品との結びつきが強度なものであることはもちろんとして,(a)当該色彩をその商品に使用することの創造性,特異性,(b)当該色彩使用の継続性,(c)当該色彩の使用に関する宣伝広告とその浸透度,(d)取引者や需要者が商品を識別,選択する際に当該色彩が果たす役割の大きさ等も十分に検討した上で決せられなければならない。

(2) 判決(令和1年(行ケ)第10119号:拒絶審決確定)
 第36類の役務について出願された、橙色からなる単色商標です。商標法3条1項6号に該当するとの拒絶理由に対して使用による著名性の獲得等を主張するも、主張が認められずに拒絶査定となりました。なお、審判および訴訟においても同主張が認めらませんでした。判決から、出願人(原告)が不動産の情報を提供するポータルサイトを運営しており、単色商標は、当該サイトのイメージカラーとのことです。
 こちらの判決では、色商標の原則を踏まえて、次のような判断を示しています。

 本願商標の橙色が使用されているが,これらの文字,図形等から分離して本願商標の橙色のみが使用されているとはいえないことを総合すると,原告ウェブサイトに接した需要者においては,本願商標の橙色は,ウェブサイトの文字,アイコンの図形,背景等を装飾する色彩として使用されているものと認識するにとどまり,本願商標の橙色のみが独立して,原告の業務に係る「ポータルサイトにおける建物又は土地の情報の提供」の役務を表示するものとして認識するものと認めることはできない。
 したがって,本願商標は,本願の指定役務との関係において,本来的に自他役務の識別機能ないし自他役務識別力を有しているものと認めることはできない。
(中略)
 そうすると,仮に原告が主張するように原告ウェブサイが不動産総合ポータルサイトのトップブランドとして周知著名であり,各不動産総合ポータルサイトがそれぞれイメージカラーを施しており,それらの色による棲み分けがされているとしても,不動産総合ポータルサイトに接する需要者が,色彩のみによってポータルサイトを識別可能な状況にあるものと認めることはできない。

3. まとめ
 上記2つの事件に係る判断、および色商標に係る商標法改正の説明会における講師(特許庁の担当官)の方の説明の記憶から、単色商標の登録は、通常の商標(文字や図形からなる商標)と比べて、ハードルが格段に高い印象を受けます。
 とはいえ、登録にならない訳ではないとも思うので、単色商標の登録を楽しみに待ちたいところです。

令和二年商標審査基準の改訂について
2020.04.16

日本
出願

 本年(2020年)4月1日からの意匠制度の改正については、特許庁をはじめとして様々なところから情報が発信されているので、ご存じのかたも多いと思います。保護対象として画像そのもの、および建築物等の外観や内装まで保護対象とされたことはもちろん、関連意匠制度の改正や権利期間の延長と盛りだくさんの内容です。
 一方で、同日から、商標制度も審査基準レベルで改訂がされました。今回はこの点について簡単に触れたいと思います。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun-kaitei/15th_kaitei_2019.html

1. 概略
 Jplat-Patで検索して頂くと明らかですが、店舗や建物と思しき画像を立体商標として登録しているものは、いままでも多数あります。今回の改訂により、店舗の外観や内装を立体商標として保護することが明らかとなりました。
 また、商標の詳細な説明の記載により、立体商標の特徴および特徴でない要素(破線等により特定)を説明することも認められる旨も明示されました。

 意匠制度の改正においても建物の外観および内装が保護対象となったことから、パッと見は、意匠も商標も同じに感じるかもしれません。
 しかしながら、意匠法では、登録の要件として所謂新規性および創作非容易性が要求されます。よって、新規性喪失の例外の適用を受ける例外を除くと、現在好評を博している店舗の外観等は保護されない恐れがあります。

 これに対して、「業務上の信用」を保護する商標法では、新規性等が要件とはされていません。むしろ、好評を博している店舗の外観等こそ「業務上の信用」が蓄積されていると思われるため、意匠ではなく商標として登録すべきです。今回の改訂により、店舗の外観等がより柔軟に保護されることが期待できます。

2. 注意点
 そうは言っても店舗の外観等に係る立体商標の登録がし易くなったとか、簡単になったという訳ではありません。

 店舗の外観等に係る立体商標が建物の形状や内装の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎないときには識別力が無いと判断されます(商標法第3条第1項第3号審査基準参照)。また、立体商標が、指定商品等を取り扱う店舗等の形状にすぎないと認識される場合も同じです(同第6号)。
 他人の登録商標との類否判断においても、他人の登録商標全体と比較されます(商標法第4条第1項第11号)。また、他人の著名な店舗の外観等と類似するものについては、出所の混同の恐れがあると判断されます(同15号)。

3. まとめ
 どのような審査がされるかについては、今後の審査状況や登録商標から傾向を見極める必要があるかと思います。ただし、立体商標として店舗の外観等の登録が蓄積されているので、既存の登録に関する審査と大きくことなることはないと推測しています。

 それでも敢えて考えると、「商標の詳細な説明の記載」において特徴をどう記載し、かつ特徴でない要素(破線)をどこと特定するか、がポイントになってくるかもしれません。商標としてどこがどのように機能しているかを判断するのは、例えばサービスの提供者たる権利者の認識ではなく、サービスの被提供者である需要者の認識を基に判断されるためです。
 したがって、出願する時点において需要者の認識を推し量ることは難しいことから、店舗の外観等の全体や店舗等の特徴と思しき要部と複数の出願を検討することも一考に値するかもしれません。

文字商標に関する出所識別機能
2020.03.16

日本
出願

 商標登録の要件の1つとして商品等の普通名称は品質表示等に該当しないことが要件とされます(3条1項各号)。
 今回は、この点について簡単に説明します。ポイントは、商品や役務(サービス)との関係で考えること、および判断時です。

1. 概説
 そもそも、なぜこの要件が求められるかについて、主に次のことが言われています。
・ 商品等に関して普通に/ビジネス上よく使用される言葉を商標として使用をしても、その出所(商品や役務の提供者)が判らない。
・ そのような言葉を商標登録することにより(商標権を設定することにより)、通常の商取引(ビジネス)が阻害される恐れがある。
 そして、例えば、次のような言葉を挙げることができます。

・ 1号:商品/役務の普通名称を普通に表示する商標 「鉛筆」について『えんぴつ』
・ 2号:商品/役務について慣用されている商標 「酒」について『正宗』
・ 3号:商品の産地や品質等を普通に表示する商標 「ワイン」について『山梨』
・ 4号:ありふれた氏/名称を普通に表示する商標 商品等を問わず『鈴木』
・ 5号:極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみの商標 商品等を問わず『○』
・ 6号:需要者が何人かの業務に係るものであると認識できない商標 商品等を問わず『令和』

2. その一方で
 とは言え、あらゆる「普通名称」や「品質表示」が登録不可と判断される訳ではありません。そもそも、「普通名称」や「品質表示」は、商品や役務との関係で判断されるためです。
 ここでは、例をいくつか挙げます。このような商標は、探せば山ほど検索することができます。いずれも、適法に登録された商標です。

・ 『APPLE\アップル』(第4023044号)第12類 自動車他
 「りんご」(第31類)との関係では普通名称だけど、自動車との関係ではOK。
・ 『かわいい動物』(第4496317号)第30類 菓子及びパン
 「愛玩動物」(第31類)との関係では品質表示だけど、菓子との関係ではOK。
・ 『ビール\BEER』(第5131070号)第24類 布製身の回り品
 「ビール」(第32類)との関係では普通名称だけど、ハンカチとの関係ではOK。

3. 判断時はいつか?その一方で
 そうは言っても、商品との関係でも普通名称や品質表示が登録されていることも事実です。
 ところで、出願が全ての登録要件を満たすと判断される基準時はいつでしょうか、出願日、大安吉日?これについて、審査では、査定(審決)時とされています。審査官が登録/拒絶の決定をしようとした時です。
 つまり、今現在(この記事が読まれている時)は、商品等の普通名称や品質表示に該当するとしても、査定当時はそれらに該当しないと判断されたため登録されたことになります。商品と関係で普通名称と思われる登録商標は、それらが更新されることにより現在に至ったものではないかと考えます。

4. 補足
 上述した他にも、「普通で表示したものではないこと」や一部の規定では使用の頻度等によって登録が認められることがあります(3条2項)。これらのことは、解説や説明が多くあるので、そちらを参照頂ければ幸いです。

指定商品・指定役務に関するトピックス
2020.02.17

日本
出願

 指定商品&指定役務およびその区分に関する情報についてお伝えします。

1. 2020年1月からの審査基準の改訂
 細かな改訂ポイントがいくつかありますが、今回の大きなポイントは、30類「菓子」が、次のように29類にも分けられました。

・ 29類 菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)
・ 30類 菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)

 大まかには、主原料によって、29類、30類のいずれかに分かれます。
 例えば「アーモンド入りチョコレート」は、従来と同じく30類です。この商品の主原料は、「アーモンド」(ナッツ)ではなく、「チョコレート」ということになります。
 何を主原料と考えるかによって区分が異なることになりますが、あられと豆類がパックになった商品は、夫々の量の多少によって区分が異なるのでしょうか?
 いずれの区分の菓子でも類似群コード(30A01)は同じです。しかしながら、区分の違いは、権利範囲として専用権と禁止権の違いにもなります。また、権利範囲のずれは、不使用取消審判により取消される恐れがあります。細かな線引きは難しいと思いますが、審査結果の蓄積を待つ必要がありそうです。

2. 採用できない商品・役務名
 少し前の情報になるので恐縮です。
 採用できる指定商品または指定役務の表現は、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で検索することができます。
 約2年前から『採用できない商品・役務名について』として採用できない(商標法第6条違反となる)表現が公表されるようになりました。
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/bunrui/saiyoudekinai_gands.html
 また、こちらは昨年だと記憶していますが、J-PlatPatでも採用できない商品等として『不可』の商品等も検索することができるようになりました。

 実務上、願書にOKの表現を記載することが大切なのは言わずもがなですが、NGの表現を避けることも必要です。今後、さらに使い勝手がよくなることを期待します。

英国のEU離脱に伴う欧州連合商標に係る出願および登録の扱い(概略)
2020.01.21

欧州
出願
その他・全般

 英国の欧州連合離脱に伴う、欧州連合商標(EUTM)に係る出願および登録の扱いについて概略のみ紹介させて頂きます。

1. 対象
 欧州連合知的財産庁(EUIPO)への直接出願
 欧州連合知的財産庁(EUIPO)を指定した国際商標登録

2. EU離脱後の扱い
(1) 離脱日において出願中の案件
 離脱日から9か月の期間において、英国商標法の規定に従った国内出願をすることにより権利化を図ることができる。当該出願において、欧州連合商標出願に係る出願日、優先日および英国に係る先行権(seniority)が認められる。

(2) 離脱日において登録済みの案件
 存続している欧州連合商標は、英国で受けられる保護や権利と同等の保護等が継続される。ただし、EU離脱後に更新期限が到来する案件は、欧州連合知的財産庁への更新手続きとは別に、英国庁への更新手続きも必要である。

3. 補足
・ 離脱撤回や離脱交渉の延長は考慮されていません。
・ 出願中の案件については、自動的に出願が移行される訳ではなく、英国庁への新たな国内出願が必要です。
・ 大量の欧州連合商標が英国商標として登録されると予想されます。混乱やミスがおこる恐れがあるので、欧州連合商標が英国商標として登録されているかについて、現地代理人を通じてチェックしたほうが好ましいです。
・ 2020年1月7日時点における情報です。掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、利用者が当情報を用いて行う一切の行為について、何ら責任を負うものではありません。

---参考情報---
https://www.gov.uk/guidance/changes-to-trade-mark-law-after-brexit#registering-a-pending-eutm-application-as-a-uk-trade-mark
https://www.gov.uk/guidance/changes-to-international-trade-mark-registrations-after-brexit

その他・全般

貴社特許(シーズ)に基づく新規技術領域創出サービス
2017.11.14

その他・全般
ビジネス

2017年11月に行われた特許情報フェアにおいて、「貴社特許(シーズ)に基づく新規技術領域創出サービス」についてプレゼンテーションを行いました。ご興味がある方はご連絡ください。

ロシア特許庁の料金改定のお知らせ
2017.11.10

その他・全般
出願

ロシア(RU)特許・意匠・実用新案の庁費用が改定されました。